第2回「八幡平の環境とエコツアー」のようすを紹介!

2021年2月16日火曜日

4期

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第4期 沸騰地熱塾第2回
「八幡平の環境とエコツアー」

第4期沸騰地熱塾の第2回「八幡平の環境とエコツアー」が11/5(木)に開催されました。

第2回は、地域資源を外部に発信していくためのエコツアー等の取組や仕組み、事例について渋谷先生の考察も含めてお話いただきます。

チラシはコチラ↓


当日のようす

今期は、オンライン開催も実施しており、会場とオンラインで参加者が集まります。参加者は、33名 (会場10名、オンライン23名)でした。当日の様子を抜粋してお伝えします。

当日の主なトピックス

  • エコツーリズムとエコツアー 
  • エコツーリズムとその他のツーリズムとの関係
  • 生物多様性とエコツアー
  • SDGsと観光  サステナブルツーリズムを目指して

エコツーリズムとエコツアー 

エコツーリズムの定義は色々あります。自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のあり方が定義の一つです。エコツアーは、エコツーリズムの考え方を実践するためのツアーを目指すものです。

渋谷先生の資料より

エコツーリズムは、国連が2002年をエコツーリズム年とするなど、国際的にも定着した用語(ecotourism)です。ただし、日本においては、環境省が推進したこともあり「環境」のみに焦点があたりがちとなってしまっています。

今でも主流な団体旅行(マスツーリズム)に対して提唱されたもう一つの観光がオルタナティブ・ツーリズムです。エコツーリズムはオルタナティブツーリズムの一つです。

エコツーリズムとその他のツーリズムとの関係

渋谷先生の資料より

農漁業体験を楽しみ地域の人々との交流を図る「グリーンツーリズム」、漁村などに滞在し心と体をリフレッシュさせる「ブルーツーリズム」など、色々な概念があります。エコツーリズムは、地域資源の保全と活用の理念に基づいており、実施主体やツアー内容を規定しない広範なものです。その為、グリーンツーリズムやブルーツーリズムを包括します。さらにエコツールズムを含むより包括的な概念が「サステイナブル・ツーリズム」です。

サステイナブルツーリズムとは、観光地の本来の姿を持続的に保つことができるように、観光地の開発やサービスのあり方を見定め旅行の設定を行うこと

現場では、各ツーリズムをまとめて束ねるコーディネーターが必要なのではないかと、渋谷先生は問題提起されました。また、渋谷先生が関わったエコツーリズム推進法についても紹介いただきました。

生物多様性とエコツアー

 生物多様性のもたらす恵みの一つがエコツアーです。

文化的サービスがまさにエコツアーに該当する

生物多様性の直接的な利用としては、生物そのものを採取し加工して利用することが挙げられます。八幡平市にあるラピアス電機株式会社が手掛けるエッセンシャルオイルブランド「LAPIAS」も、直接的な利用の事例の一つです。間接的な利用としては、釣り・キノコ狩り・ダイビングなど、様々なレクリエーションが該当します。

また、エコツーリズムの実践事例として、エコツアー発祥の地であるコスタリカの事例、ガラパゴス諸島の事例、屋久島や小笠原諸島の事例、阿蘇の取り組み等を紹介いただきました。

岩手県の実践事例もお話いただきます。

二戸市は、1992年からまちづくり(地域活性化)の一環としてエコツアーを取り入れています。未来政策研究所が中心となり、地域の誇りを「宝」として位置づけ保全活動に取り組むことで、市民とともに産業振興を図っていくというものです。地域経済の活性化の仕組みとして、観光を取り入れている事例に当たります。未来制作研究所は、この取り組みを「宝探しによる日本型エコツーリズムの推進」と名付けています。課題も含め、ビデオ映像を見ながら詳しく解説いただきました。

小岩井農場もエコツアーを行っています。エコツーリズム大賞も受賞していることが紹介されました。

八幡平の自然環境資源としては、十和田八幡平国立公園などの自然資源、文化資源やまちの魅力があります。旧松尾村時代に松尾村ふるさと景観条例が作られ、景観等を守る仕組みが作られていますが、伝えなければ訪れた人にはわかりません。だからこそ伝える取り組みが大切であることをお話いただきました。

伝える手段の一つとして、岩手県環境生活部環境生活企画室がまとめた「八幡平の環境学習」が紹介されました。

八幡平の環境学習(出典:八幡平の環境学習)。読むことで、自然環境資源をわかりやすく知ることができる。活用事例として、みちのりトラベル観光のツアーの素材として使われている。

SDGsと観光  サステナブルツーリズムを目指して

SDGsの項目の中で、観光はすべての項目に関係します。地域の魅力を大切にする観光はSDGsに大いに貢献すると考えられています。その中で、注目されているのがサステナブルツーリズムです。

国連のサステナブルツーリズムの定義を簡単に訳すと以下のようになります。

現在と将来の経済的、社会的、環境的な影響を熟慮しながら、訪問客並びに、産業、環境、そして観光の受け入れ側コミュニティーのニーズに対処する観光

このような考え方は、エコツーリズムをはじめ今まであまりなかった考え方です。持続可能性を考えた場合、この考え方が重要になると考えられます。

日本でも近年サステナブルツーリズムに注目する流れが生まれてきており、2020年6⽉に、観光庁がGSTCに準拠した「⽇本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」を公表しました。


国際的な認証としては、持続可能な観光を実施している地域の国際認証として「サステイナブル・ツーリズム国際認証」があります。日本では、釜石市が認証第1号です。国際基準100項⽬の評価作業や審査があり、釜石は100項目中60項目までクリアし、ブロンズ賞を受賞した経歴があります。今回の講演では、釜石市が国際認証をとるために実施している取り組みが詳しく紹介されました。

持続可能な観光の国際基準に照らし合わせると、観光だけを取り扱っているだけでは、認められません。世界のサステイナブル・ツーリズム(観光)の概念は幅広く、対して日本の観光の概念は狭すぎる為、世界では通用しないのです。世界に対して遅れを取っているという見方もできます。国際認証は、観光課だけの対応では取得が不可能なので、市役所全体で対応する必要があると渋谷先生は話します。ハイレベルな観光客は国際認証を取っているところに行くので、釜石市以外にも、国内での取得が望まれます。

最後に今後の方向性についてご提案をいただきました。

サステイナブル・ツーリズムが世界の潮流であるとすれば、日本の観光は世界標準に合わせていく必要があると言えます。この為には、従来の「観光」行政組織では難しいので、街づくりの一環として政策横断ができる部署が中心となる必要であると言えるでしょう。国際認証を目指すことは、市の観光資源の掘り起こしにつながるなど街の健康診断のようなものにもなります。訪問者の視点で必要な情報を広域的に提供することが大事です。八幡平市だけ見ていては限界があるので、より広域に取り組む仕組みを作ることが望ましいと考えられます。

渋谷先生の講演が終わると、意見交換の時間が設けられ、活発な意見が飛び交いました。


八幡平市は、旧松尾村が早くから観光立村を目指すなど観光に力を入れてきました。しかし、世界の潮流を考えると、サステイナブル・ツーリズムに即した国際的に評価される観光への取り組みが必要とされてきているのかもしれません。豊富な事例を知ることができ、サステイナブル・ツーリズムの重要性を痛感するなど、観光への理解が深まる回でした。

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